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太陽光未稼働案件の切り捨て、2020年3月まで待って」 JPEAが要望

2018年11月26日掲載   未稼働案件に関する制度改正案が施行された場合の影響について ※2018年11月27日訂正:本文内に誤りがあり、複数の箇所(タイトル、期限延長に関する部分)において訂正いたしました。混乱をお […]

2018年11月26日掲載
 

未稼働案件に関する制度改正案が施行された場合の影響について

※2018年11月27日訂正:本文内に誤りがあり、複数の箇所(タイトル、期限延長に関する部分)において訂正いたしました。混乱をお招きいたしましたこと、深くお詫び申し上げます。

太陽光発電協会(JPEA)は11月21日、事業用太陽光発電の未稼働案件に関する制度改正案(FIT法施行規則の一部を改正する省令案)に関して求められたパブリックコメントに対し、JPEAとしての見解を発表した。同時に、太陽光発電事業者に対して、未稼働案件に関する制度改正案が施行された場合の影響について、緊急アンケート調査を行った。

同改正案の概要は、事業用太陽光発電の調達価格が半額以下にまで下落(2012年度40円/kWh→2018年度18円/kWh)したが、高い調達価格の権利を保持したまま運転を開始しない案件が大量に滞留するという課題を踏まえ、2012~14年度認定の事業用太陽光発電で、運転開始期限が設定されていないもののうち、運転開始準備段階に入っていないものは、運転を開始する時点のコストを反映した適正な調達価格を適用するというもの。

同改正案についてのJPEAの見解は、下記の通り。

申し込み期限や条件など、大幅な修正を希望

JPEAは、今回示された未稼働案件の制度改正案は、太陽光発電が日本の主力電源となる過程における国民負担の抑制を目的とした制度変更であり、その目的には賛同している。

しかしながら、同制度改正案が実施された場合、FIT制度によって一旦は約束された買取価格と買取期間が遡及的に変更されることになり、太陽光発電にかかわる事業者や国内外の投資家・金融機関からFIT制度の安定性と信頼性・事業予見性の損失を危惧する声が多くあがっていることから、再生可能エネルギー全体への甚大な影響を懸念している。

そうした影響を回避するため、JPEAは、緊急アンケートの結果を踏まえ、同改正案の大幅な修正を次のように希望している。

  1. 系統連系工事着工申し込みの期限については受領日を期限とするのではなく提出日を期限としてほしい。(理由:送配電事業者に負担がかかり、また送配電事業者の裁量に委ねることになる)
  2. 系統連系工事着工申し込みの提出期限については、2019年1月下旬頃となっているが、少なくとも 2020年3月末まで延ばしてほしい。
  3. 系統連系工事着工申し込み受領後、送配電事業者が決定するという「連系開始予定日」は、機械的に決めるのではなく、すでに合意された連系予定日を基本とすべきであり、もし合意されていない場合は、発電事業者の希望も尊重して決定されるべきである。
  4. 系統連系工事着工申込みの提出後において、止むを得ない事情(代表者の死亡、条例・技術基準の変更や住民要望への対応、自然災害、電力会社の都合など)により事業計画の変更が必要となる可能性があることから、調達価格が変更されない事業計画の変更認定、並びに事前・事後変更届による変更、発電事業者の責によらない「連系開始予定日」の変更に関しては、系統連系工事着工申込みの再提出を不要としてほしい。
  5. プロジェクトとしての熟度がある程度進み、投資などが行われている案件(実現性の高い案件)については、今回の制度変更の対象から除外してほしい。例えば、以下の様な条件を満たしている場合などである。
  • 融資契約が締結されている
  • EPCや建設事業者等と建設請負契約等を締結している
  • 建設工事を開始している
  • 工事負担金の3割以上を送配電事業者に支払っている
  1. 環境アセスなどのプロセスに時間を要している案件については、今回の制度変更の対象から除外してほしい。
  2. 運転開始期限については、「連系開始予定日」プラス3カ月としてほしい。(大型案件の場合、系統連系から運転開始まで試運転期間として3カ月程度要するため)

なおこの改正案は、「未稼働案件への対応」として、10月15日に経済産業省資源エネルギー庁により公表されたもので、11月21日まで意見公募(パブリックコメント)が行われていた。

アンケートの回答、113件(計310万kW)に影響

JPEAが発電事業者(主に会員企業)を対象に緊急アンケート調査を実施したところ、29社から回答が得られた。このうち影響を受ける可能性がある案件は113件、設備容量としては合計で310万kWに達することが判明した。

また、太陽光発電事業者の中には、同改正案の発表後、金融機関からの融資が止まるなどの影響で、建設工事を急遽中止した事業者が存在することもわかった。

アンケート結果の概要は、下記の通り。

FIT制度改正で約80%が稼働できなくなる見通し

改正案の実施により影響があるとされた113の案件には、合計で約1680億円がすでに投入された。そのため、もし稼働出来なくなれば、約1210億円の違約金が追加で発生するとの回答が得られた。

また、今回の制度改正がなければ、これらの案件の殆どは稼働する見込みであるが、制度改正案が実施されれば、その約8割(92件)は稼働出来なくなる見通しであることがわかった。

制度改正により稼働予定案件が未稼働に

制度改正により稼働予定案件が未稼働に(件数への影響)
(画像クリックで拡大)

4年以上かかった「稼働遅延」の理由あれこれ

稼働が遅れている理由で最も多いのが「電力会社の系統連系予定日に合わせて予定を組んだから」が24件で、2番目に多いのが「林地開発等の許認可」が19件、3番目が「造成、建設工事に時間を要するから」が16件であった。その次に多いのが「地権者との契約」と「条例による環境アセス」がそれぞれ7件であった。

アンケートでは「2020年3月まで延びれば間に合う」?

今回の制度改正案が実施されれば、買取価格や買取期間が変更される可能性が高いと認識されていることが分かった(価格変更の可能性は109回答中、確実が32、極めて高いが31、高いが27、低いが19。買取期間短縮の可能性は110回答中、確実が55、極めて高いが15、高いが20、低いが20)。

その上で、現状の買取価格が維持されるための方策としては、系統連系工事着工申し込みの受領期限を延ばすことという回答が最も多く、2020年3月まで延ばせば34件中、累計で24件が価格変更を回避できるとの結果が得られた。

また、現状の買取価格が変更されないための条件として、系統連系工事着工申し込みの提出期限(現行案では2019年1月下旬)をいつまで延ばしてもらえれば対応可能かという追加アンケートを行ったところ、提出期限が2020年3月末日までであれば75件中、54件が対応可能との回答だった。


JPEAは、この緊急アンケート調査の対象は、太陽光発電全体の未稼働案件約3000万kWの、ごく一部でしかないことに留意する必要があるとして、改正案の修正を要望している。